スキップしてメイン コンテンツに移動

UV太陽紫外線:人間以外がサンスクリーン剤を塗っても効果ある?



夏休みの自由研究で「紫外線の謎」に取り組んでいる全国の子ども研究者たちへ!「教えて!goo ウォッチ紫外線の謎」に寄せられた質問に対する回答で大幅に割愛された詳細部分を3回に分けて記事にします。ぜひ、研究の参考にしてくださいね!

《第1回》まず初めに理解することがあります。それは、サンスクリーン剤はヒトがヒトの皮膚をUV太陽紫外線から防御するために開発されたものであるということです。同じ生体でもヒトと動物では皮膚構造が異なります。ヒトの皮膚は大きく分けて外側から順に「表皮」「真皮」「皮下組織(脂肪層)」からなる3層構造です。「表皮」は、厚さが平均約0.2ミリのとても薄い膜です。皮膚の外側(表面)にあり、外部からの異物の侵入や体の水分の蒸散を防ぐバリアの役割を果たします。表皮は、外側から順に「角層」「顆粒層(かりゅうそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「基底層」の4つのレンガのような層から成っています。

特に波長が長い紫外線UV-Aは真ん中の層「真皮」まで浸透して色素沈着(サンタン)、シミやシワなどの早期光老化を引き起こします。紫外線UV-Bは表面の層「表皮」の細胞核に強いダメージを与えて日焼け(サンバーン)、色素沈着(サンタン)、浮腫などの炎症、皮剥けなどの原因となります。このような太陽紫外線ダメージを遮断するために、日焼け止めというサンスクリーン剤は化粧品として開発されました。遮断方法は「紫外線散乱剤」(酸化亜鉛や酸化チタンなどの物理的に紫外線を反射させる無機粉体)と「紫外線吸収剤」(吸収した紫外線のエネルギーを熱エネルギーに変換して放出という)大きく2つの働きに分類されます。しかし、紫外線吸収剤は化学変化を起こしやすく敏感肌の方にはトラブルの原因となるケースも多く、紫外線吸収剤を含まないノンケミカルサンスクリーンを選択する方が賢明です¹。

このようにサンスクリーン剤はヒトの皮膚においてもトラブルを起こすことも間々あります。例えば、我々に身近で癒しをくれる犬や猫。ヒトと同じ3層構造の皮膚を持ちます。しかし、ヒトに比べて「表皮」の厚さが5分の1程度しかなく、豊かな被毛で覆われているとはいえ、ヒトよりも非常にデリケートな皮膚だと言えます。ですから、結論として、ヒトが使用するサンスクリーン剤の成分の一部はヒト以外の動物の紫外線予防にも役立つものもありますが、動物ひとつひとつの生体の皮膚の細かい造りがヒトと異なるため、ヒト用にアレンジされたサンスクリーン剤を動物に適用することは決してしてはいけませんし、望まれる効果を得ることは出来ません。


図1) 原核生物および真核生物における糖リン酸シクラーゼのバイオインフォマティクス分析およびガドール生合成酵素の生化学的特性



図2) ゼブラフィッシュのゲノム

オレゴン州立大学のAndrew Osborn、Khaled Almabruk、Garrett Holzwarthなどの研究チームは、既に高度に研究されていた「ゼブラフィッシュ」、そして同様の遺伝子クラスターを持つ他の魚、鳥類、両生類、爬虫類の脊椎動物に日焼け止めとして機能する化合物である「ガドソール(Gadusol)」を生産する遺伝子があることを2015年に発表しました²。ガドソールはUV太陽紫外線の特にUV-Bを吸収しそれを熱として消散させます。ゼブラフィッシュの全ゲノム配列はヒトと80%の相同性があり遺伝子数もヒトとほぼ同じです。セドヘプツロース-7-リン酸から日焼け止め化合物ガドールを生成できるタンパク質遺伝子群を持ちます³。微生物も又この分子を用いて日焼け止め化合物を生成しますが、その生成過程はゼブラフィッシュとは異なります。このようにヒト以外の動物にはまだまだ我々が知らないUV太陽紫外線に対する独自の防御機能が備わっている可能性が十分にあり得るのです。そして、そのメカニズムの解明でヒトのUV太陽紫外線防御を著しく向上させる日が来るかもしれませんね。皆さんは、UV太陽紫外線予測・予防で世界No.1無料アプリQSunをダウンロードして活用していますか? UV太陽紫外線研究の教材としても最適ですよ!
▶︎無料QSunアプリダウンロード iOS Android

Sources:

1. 平尾哲二 著 - 医師・医療スタッフのための化粧品ハンドブック - 中央医学社(2016.12.10)
2. eLIFE Andrew R Osborn Khaled H Almabruk Garrett Holzwarth Shumpei Asamizu Jane LaDu Kelsey M Kean P Andrew Karplus Robert L Tanguay Alan T Bakalinsky Taifo Mahmud Oregon State University, United States
https://elifesciences.org/articles/05919
3. eLIFE Carolyn A Brotherton Emily P Balskus Harvard University, United States
https://elifesciences.org/articles/07961

コメント

このブログの人気の投稿

イルカの皮膚の神秘

皆さんはイルカの皮膚を触ったことがありますか?私はあります。幼少の頃にもありますし、実はつい最近も好奇心と探究心を持って触らせて頂きました。その感触はもちろん人の皮膚とは大違い。魚類のウロコとも違います。見た目がテカテカしてるからツルンツルンしてるのかと言えばそうでも無くザラザラしたような感触も多少あり、これが最適な表現なのかはよく解りませんが、私は「ブニュブニュ」という言葉の響きが一番しっくりくると感じています。バスケットボールの表面に近いと言えば解りやすいでしょうか? そもそも、なぜ私がイルカの皮膚に強い興味を抱き独自に研究をしているかというと、 イルカの皮膚は2時間に1度生まれ変わっている という衝撃な事実を知ったからです。一説ではイルカは人類の次に知能が高いコミュニケーション能力を持っていると言われており、異なる生息海域ごとに方言まであるそうです。バンドウイルカは人間と同じように個体を名前で認識してコミュニケーションしていることなどがよく知られています。 知能が高いが故に人間と同様にストレス発散のために集団いじめを行ったり精神的に追い詰めるような残酷な一面があることもまた知られています¹。そのような精神的陰陽と時速50kmで泳ぐことができたり、最高8mジャンプ出来たり²、脳を半分ずつ眠らせて泳ぎながら寝ることができたり、皮膚が2時間に1度生まれ変わったりすることを考えると実は人類以上の能力を秘めているような気さえしてきます。さて、少し話が逸れましたが本題です。イルカの皮膚はなぜ2時間に1度生まれ変わるのでしょうか?解りますか?結論からいうと 水の抵抗を極限まで減らして早く泳ぐため です³。美容のためではないんですね〜。 水の密度は空気の800倍ほどあると言われています。水泳などで皆さんも経験があると思いますが水中では体に沿って乱流渦が発生して身体の背面に回り身体を引っ張るため前進を妨げる抵抗を感じます。イルカのバスケットボールの表面のような弾力性の皮膚はスポンジのように水分を吸収するヒドロゲルで覆われた表皮、真皮、脂皮の三層から構成されておりクッションのように乱流渦の抵抗を防ぐ(水圧を吸収する)のです。最近の研究では、 はがれ落ちる皮のしわの突起の部分がイルカの皮膚の表面にできる乱流渦を抑制して抵抗を抑えている とも考えられています⁴。 イ...

太陽と人類の相反する歴史とQSunが切り開く共存という未来

人類が古代から太陽に対し崇拝と忌避を繰り返してきた歴史があることを皆さんも何となくご存知かもしれません。この相反する歴史は大きく7つに区分されます。ミステリー好きであれば古代ローマ・エジプト・マヤ・アステカ文明と聞くと太陽神信仰崇拝の生贄儀礼などがすぐに頭に思い浮かぶと思います。この 「1区分」 の時代は太陽はその恵みにより生命と食物を育み病気を治し災害を遠ざける創造神とも絶対神ともいえる特別な存在で生命維持装置の役割を担っていました。 第一次太陽崇拝時代 です。 そして時は流れ 「2区分」 の1700年〜1800年代、特に西欧で白い肌が富の象徴とされる現象が起きました。 第一次太陽忌避時代 です。この時代に初めて太陽忌避という強い概念が誕生して日光を避ける文化が定着。太陽防御のパラソルや帽子やスカーフなどが登場し日常生活に定着しました。それとともに太陽がもたらす負の部分が少しずつ解明されていきました。 「3区分」 はココ・シャネルが生んだブロンズルックの大流行に伴う 第二次太陽崇拝時代 です。若者を中心に日焼け=健康=グラマーの象徴といったような日焼け礼拝が巻き起こりました。しかし日焼けの害が広く知れ渡ることになると1920年代後半には日焼けの弊害が具体的に認識され日光防御としてサンスクリーン剤が初めてこの世に誕生しました¹。これが 「4区分」 の 第二次太陽忌避時代 です。 そして1930年代〜1940年代は 「5区分」 の 第三次太陽忌避時代 として太陽の悪影響と防御の研究開発が盛んに行われました。この僅か数年後の第二次世界大戦直後1946年以降〜には 「6区分」 として現在に通じる小麦色の肌=健康というシンボル化が形成され太陽崇拝が再燃しました。ビキニスタイルの大流行や現代の日本でも特に男性の意識化に潜在的に強く残っている日焼け・サンタン(黒化)=健康=カッコイイという概念が文化として定着。これが 第三次太陽崇拝時代 です。 1990年代に入りオゾン層破壊と太陽紫外線の具体的な悪影響(皮膚がんや白内障や免疫機能低下など)が全世界の知るところとなりました。今日まで続く 「7区分」 の 第四次太陽忌避時代 です。UVカット機能が搭載された日傘やサングラスや帽子などの予防アイテムが充実し、サンスクリーン剤は著しい進化を遂げました。しかし、この第四...

色素性乾皮症(XP):極度な光線過敏性皮膚疾患

一部の特に肌の白い人は太陽に敏感です。それ以上に 色素性乾皮症(XP) と呼ばれる欧米では約25万人に1人(日本では約1万5千人に1人)の珍しい皮膚疾患は、常染色体性劣性遺伝で発症する極度な光線過敏性皮膚疾患です。白内障のように、色素性乾皮症(XP)は皮膚がんを発症する危険性が非常に高いと考えられています¹。日光防御は全ての人にとって重要ですが、色素性乾皮症(XP)を患っている方にとって予防の有無は人命に関わります。 「光老化」の我々の以前の記事を読んでいれば、あなたは皮膚を太陽に曝すと皮膚細胞DNAがUV太陽紫外線を吸収し、遺伝情報の構造変化を引き起こすことを知っています。私たちの細胞が損傷を修復できない場合、突然遺伝子変異を引き起こす可能性があります。色素性乾皮症(XP)はその最たるものであり、遺伝的欠損によるDNA損傷を修復することができず、これが皮膚がんを引き起こす可能性があるのです¹。 色素性乾皮症(XP)を患っている方は太陽紫外線曝露の悪影響を避けるために日焼け防止のあらゆる対策を取る必要があります。日焼け止めの塗布と再塗布、UV防護服、帽子、遮蔽の高いサングラスの着用、可能な限り日陰で過ごすことが望まれます。 蛍光灯は紫外線を放射します。 通常のガラス窓を透過する紫外線も同様に危険をもたらす可能性があるために、屋内においても十二分に注意する必要があります²。日々の日焼け対策に加えて、色素性乾皮症(XP)患者は定期的に皮膚科医の受診が必須となります³。 色素性乾皮症(XP)を患っている方は日なたで時間を過ごすことは危険なので、日光曝露を通してビタミンDを生成することができません。栄養不足を避けるためにもビタミンDサプリメントを服用することをお勧めします³。 QSun™ チームは現在、日光からの天然ビタミンD摂取量の算出に取り組んでいますのでもう少しお待ちください! Sources: 1. Genetics Home Reference. (2017). Xeroderma Pigmentosum. Retrieved April 3, 2017, from https://ghr.nlm.nih.gov/condition/xeroderma-pigmentosum. 2. MedlinePlus. (2015). Xero...