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高湿度環境下では皮膚バリア機能が鈍る




生物は環境から情報やエネルギーを取り込み、そして形を変えてそれらを放出しています。言語化されやすい視覚・聴覚の情報は比較的意識されやすいですが嗅覚や触覚は言語化しにくい領域です。触覚を皮膚が担っていることは皆さんよくご存知でしょう。しかし、皮膚が皮膚感覚としての痛みや痒みや冷たさや温かさをなどの情報だけではなく環境の変化に応じてさまざまな信号を発していることを知っていましたか?表皮からの信号が免疫系や中枢神経系などと密接な関係をもっていることが最近わかってきました。

我々を外部環境から守る皮膚のバリア機能を担っているのが一番表面にある死んだ細胞でできた1mmの1/100〜1/50というとっても薄い角層です。古くなりバリア機能を失くした角層は垢となり剥がれ落ち新しいものに更新されてきます。資生堂ライフサイエンス研究センターの傳田光洋主任研究員が行った環境湿度と皮膚の適応実験で、環境湿度が低い場合には角層は自覚的に厚くなりバリア機能も高まる「環境適応」をしましたが、高湿度環境にさらされていると角層は薄くなりバリア機能もわずかに低くなり適応したとは言えませんでした¹。

サンフランシスコのイライアス研究室のラットを使った実験でもダメージを受けた角層が再生するのは神経系や循環器系とは離れた表皮の自律的なシステムであると考えられています。つまり皮膚は常におのれを知っているのです。しかし、前述のように高湿度環境化において太陽紫外線ダメージを受けると皮膚の自慢のバリア機能が鈍ってしまうようです。

ということは高温多湿の日本においては角層の環境適応力が鈍いと考えられます。そのためUV太陽紫外線ダメージが浸透しやすく蓄積される可能性が高まります。改めてUV太陽紫外線に十分に注意する必要性を感じざるを得ません。そして、皆さんの多くがどちらかというと心臓や肺や胃や腸といった臓器よりも皮膚を軽視している傾向にあります。皮膚は単に身体の包装紙ではなくおのれで感じ考え判断し行動する非常に重要な身体の最も大きな臓器「外臓」なのです。皮膚は生きています。UV太陽紫外線による皮膚ダメージは本当に危険なことであることを認識して皮膚を大切に慈しむ姿勢が太陽紫外線と向き合う上で非常に重要なのです。QSunの使用を習慣化すると自分の皮膚を他の臓器のように愛おしく大切に労わることができます。それはつまりあなたのお肌を健康に保ちます。


Sources:

1. 傳田光洋 著 - 皮膚は考える -岩波科学ライブラリー112(2005.11.2)

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